味覚の王様キャビア、キャビアとはトリュフ、フォアグラと並んで世界の三大珍味と称されている大変高級な食材です。一般にはチョウザメという魚の卵がキャビアと呼ばれています(チョウザメ以外の魚の卵がキャビアと呼ばれる場合もあります)。
キャビアの採れるチョウザメはカスピ海やその周りの河川に多く生息しているため、世界のほとんどがイラン産かロシア産となっています。それではキャビアの生みの親、チョウザメとはいったいどのような魚なのでしょう?
現存する残り少ない魚族の一つで、学名ではAcipenser、英語ではスタージャン(sturgeon)と総称されるこの魚は、日本では一般に「チョウザメ」(蝶鮫)と呼ばれています。外観がサメに酷似しているため、サメの一種と誤解されがちですが、いわゆるサメ科の仲間ではありません。分類上では、一応硬鱗魚目チョウザメ科に属していますが、軟骨魚と硬骨魚の中間の魚で、そのいささか野暮ったい外形からも推察されるように、かなり先史時代の様相をとどめています。
なお、皮を磨くとチョウ(蝶)の紋様が表れるというのが、和名の由来です。体長は1~4mに達し、背は蒼灰色で腹は白く、体表に硬い菱形のウロコが連なり、おしなべて鼻面が突き出ており、歯のない口の下側に海底の餌を捕食する4本のヒゲが垂れさがっているのが特徴です。
肉は美味で厄介な骨はありません。チョウザメの仲間は世界中で20種類以上に及び、カスピ海には5種類が生息していますが、そのうちにキャビアが採れるのは、次にご紹介する3種類にすぎません。この3種類が世界のキャビアの生産量の90パーセントを産出しています。
和名はオオチョウザメ。チョウザメのなかでも最も体が大きいだけでなく、積極果敢な捕食性を持つ唯一の種類。非常に珍しい魚なので年間漁獲量が100匹を超えることはまれです。ベルーガは大変強く、活発で口も大きく絶えず動き回り、餌食の白身の魚の群れを執拗に追いかけるたくましさをもっています。体長は4メートルまでにもなり、体重は1トンを超えることもあります。通常の大きさのものは40~300Kgで、体重の約15%の重量のキャビアが採れます。
ベルーガ・キャビアは明灰色から暗灰色を帯びており、表皮がきめこまかく、大粒であるのが特色で、非常に珍重されている高級品です。明るい色のものほど好まれています。
中程度の大きさのチョウザメで、他の仲間と同様、雑食性。ややとがった鼻の下にある口先を伸ばして海底をさぐり、藻類や小動物を無差別的に吸い込みます。アセトラの体長は2m、体重200Kgにまで成長します。平均的なサイズは全長1.2m、体重20~80Kgです。
インペリアル・キャビアは高齢のチョウザメから採れる大粒琥珀色のアセトラ・キャビアで最高の風味を持つキャビアです。その昔イランの皇帝専用であったためこの名前がつきました。
アセトラ・キャビアは褐色を帯びた灰色から金色のものまであり、格別の逸品です。ユニークなナッツの風味をもつ唯一のキャビアであり、きわめて珍重されています。
この種はスマートな形をしており、小型。上向きにそり返った尖った口先をもっています。ダイアモンド形の硬鱗がきわめて目立っているのが特色です。体長は最大1.5mで、体重が25Kgを超えるものは滅多にありません。
セブルーガ・キャビアは暗灰色をしており、小粒ですが、独特の風味があるため、大変人気があります。